The minstrel of wandering yousyou - Last Stage - Lineage

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カテゴリ:A story( 1 )
A story 1
一つの物語

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「WIZの装備、いるか?」

魔法使いである私が「歌う島」に降り立ったのが今年の8月も末の事。
その数日後に島の浜辺で、一人のプリンスにこう話し掛けられた。
右も左も分からない駆け出しのウィザードの私には、有り難い申し出であり、
拒否する理由が全く見当たらなかった。
唯一つを除いては。

其れまでにも、所謂プリンスという人間が島の至る所で
「勧誘」を行っているのを目にしている。
次にそのプリンスから出てくる言葉を私は、半分予想していた。
が、彼の放った言葉は、その安易な期待を全く裏切るものであった。

「見た所初心者の様だが、うちのクランには誘えないな」
彼の血盟がPKも辞さないスタンスである事。
いついかなる時も死と隣り合せである事・・・
それ故、初心者である私には、薦められないクランである事を。
簡潔に短い言葉で、ややもすると冷たい言葉で。

それから暫くは、私は一人で島内の様々な場所での経験を積んだ。
本土への入口である「話せる島」にも行き来するようになった。
様々な魔法も習得し始めた。
そんな折に、島内(これはもう「話せる島」での話だが)で、
嫌でも私 の耳に飛び込んでくる名前があった。
「歌う島」で話し掛けて来た、彼の名だった。

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同時に、彼の噂や、そのスタンスも私の耳には入ってきた。
それは決して良いものではなかったが。

「PK反対」「ネタクラン」等等

私にはどうしてもそうとは思えなかった。

その頃の私は、既に「歌う島」を卒業するのに十分な経験を積んでいた。
魔法もあらかた習得していた(その時点で、であるが)。
やることはやったという過信があった。
が、それよりもなによりも、彼のそのスタンスが、私の琴線に触れていた。

「ここは冒険者の世界だ。この世界ではいつも死と隣り合せだ。
殺さないでくれ?何を言っているんだ?そうやって怪物共にもお願いするのか?」

私は「話せる島」の商人パンドラから便箋を購入し、彼に手紙を送っていた。

最初は彼と二人きりの冒険だった。
彼は私の知らない世界を、
私の知らない知識を、
私の知らない魔法や装備を、
薬を、
スクロールを、
そして成長というものを与えてくれた。

それは決して優しい言葉ではなく、また優しい経験でもなかった。
何度も瀕死の状態となった。
正直、彼の冷たさを嘆いた事もあった。

しかし少しずつ、私はこの世界をより深く知る様になる。
彼が与えてくれた様々が、決して安くはない事。
それどころか現在の私が入手するには不可能な程、高価である事。
彼の収入が決して裕福ではない事など。

と同時に、最初はほぼ2人であった血盟も、少しずつではあるが賑やかになる。
彼のスタンスに協調する同志が増えだしたのだ。
しかしそれは同時に、敵対する存在の増加も意味している。
やがて、始めて彼に出会った時に言い放たれた言葉が、
現実のものとなる機会も遣って来る。

それも繰り返し。

しかし(他の冒険者からすると全く理解できない感情であるらしいが)、
私には居心地が良かった。
何より自由があった。
信頼出来る冒険者がいた。
冒険の途中での、何気ない彼らとの遣り取りと、
彼の其れに対する、最初と全く変わらない、醒めた視点が、
妙に心地よく感じた。

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そんな毎日が繰り返される中、私は私なりに成長していった。
少しずつではあるが、活動するフィールドも広がって来た。
装備も充実してきた。
魔法も習得し、ウィザードとしても、それなりに一人立ち出来つつあった。

適度な緊張感を伴う、最高のその居心地の良さ。
ずっと続くと思った。


「引退」


それは正に晴天の霹靂だった。
安易な私の考えは、再度ここで打ち砕かれる。
正に急転直下。
私にとっては最初の、そして血盟にとっては最後の戦争があった。
彼は彼の装備を、莫大な数の道具を、
血盟員だけでなく、広く冒険者たちに、安価に提供した。
そして彼は文字通り、裸一貫となった。

「これが現実なんだ・・・」

私は混乱していた。

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自分で自分の状況をよく理解出来ていないそんな折り、血盟員で集まったその時に、彼は、皆の前で私に言った。

「Youには別に渡すものがある」

他の冒険者にも、毎々が何かしらを譲渡されていた。
そしてそれは、今の私であれば十分過ぎる程、理解できるものであった。
非常に高価で、今の私でも簡単には入手出来ない物ばかりであった。

その中で、私に渡されたもの。
初心者が使う魔法書数十冊
サファイア2個

他の冒険者に譲渡されたものと比べると、
それこそ比較にならない程の、言ってしまえばどうでも良いもの。

「これを渡す意味は、自分で考えろ」

そして血盟は解散の日を迎えた。

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最初は、全く意味が分からなかった。
しかし、今なら分かる気がする。
ある女君主は、こんな私にも暖かい誘いの言葉を掛けてくれたりもした。
非常に暖かい、今の私の心には染み入る言葉だった。

何れ私も、再び何処かの血盟に所属する事もあるだろう。
そのときに、私の様な初心者がいたら、きっとこう言に違いない。

「WIZの装備、いるか?」


そして、私はまた、この世界で放浪の旅に。


2003年11月06日 09時59分28秒

http://www.geocities.jp/yousyou/index.html
http://www.geocities.jp/yousyou/index2.html
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by yousyou1208 | 2003-11-06 09:59 | A story
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